【えんとつ町のプペル 映画への共感】あらすじに隠された現状の日本と日本が向かう未来を読み解く

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2021年、最初の映画館での映画鑑賞となったのがアニメ「えんとつ町のプペル」です。長い海外生活から帰国後、日本で痛感している日本社会への違和感を共有させてくれる心強い映画でした。以下は、ネタバレがあるのでお気をつけください。

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えんとつ町のプペルとキングコング・西野亮廣さんについて 前知識なし

今になり色々と調べてみると、この映画の制作者のお笑いコンビキングコングの西野亮廣さんは常に良くも悪くも世間から注目されてきた人のようです。私103は2020年より本格的に日本に再移住してきまして、その前はオーストラリアや海外で長い間生活していたためあまり積極的に日本の芸能界などの情報を追ってはきていませんでした。もちろん、絵本作家に転身したお笑い芸人さんがいて、その絵本が人気である、というとても表面的なことは知っていたものの、西野さんへのイメージも先入観も何もありません。そんなところで、Nemuがこの映画が良いらしいと色々と前情報を集めてくれました。オリラジの中田さんのYoutube番組「Win-Win-Win」で西野さんが映画について語っている回などを見ながら、これは映画館で見るべき映画だと確信しました。

また、日本映画やアニメについての強い思い入れも全くありません。日本映画は、黒澤明監督はオーストラリアでDVD化されていた作品はほとんど見ていて「生きる」や「羅生門」は世界中の人にぜひ見てもらいたい作品だと思っておりますし、市川崑監督の金田一シリーズも大好きなので何度となく繰り返し鑑賞をしています。日本映画への愛といっても興味はその辺りで、宮崎駿さんのアニメも恥ずかしながら、しっかりと見たことがなく、日本のTVドラマも全く見ておりませんのでどちらかというと日本の映画やアニメには懐疑的だった方かもしれません。

そんな私が今回、「えんとつ町のプペル」を劇場で見て、日本人としての誇りのようなものを感じずにはいられない素敵な作品だと思いました。

映画えんとつ町のプペル あらすじよりも表現したいテーマへの強い思い

(1)否定されることへの共感 共同体の一部であることへの反感

一般論としてこの映画を評価すると、それはある層の人の考え方や価値観へのある種のアンチテーゼになるのではと思い、だからこそ西野さんへのアンチ的な意見が出てくるのだと思います。私103は、客観的というより主観的にこの映画のテーマを捉えました。

今まで、自分の人生を振り返ってみても、一般的なレールの上を歩んではきていません。

日本で大学を出るまでは、あまり恵まれていない家庭環境と容姿のために嫌というほど反骨精神を養うしかなかった環境で育っています。ラッキーなことに、友達に恵まれ、いじめられる経験はしてないのですが、特に学校という集団の中では異質な存在であることを感じずにはいられない子供時代でした。

そこから大学卒業後は、カナダやNZに飛び出し、結果的にオーストラリアの永住権を取得してオーストラリアで今後も暮らしていくことができる選択肢を手に入れました。

その中で、ルビッチのお父さんブルーノが夢を見続けることの大事さを息子に伝えたいという思いへとても共感しました。

挑戦してみなければ、どのような結果になるかわかりません。そして、挑戦せずにどんな結果も生まれない。結果が出る出ないに関わらず、上を向き続けることで今の自分や将来の自分が見えてくるというのは共感できる素敵な考え方だと思いました。

そこで、この映画のキャラクターの一人ガキ大将的な存在のアントニオが重要な役割を担います。彼はそのような夢追い人であるルビッチのお父さんやルビッチも否定します。それは、挑戦することへの恐れ、もしくはもっと強くは共同体の中で生きることを肯定し、迎合する自分への葛藤が表現されています。ルビッチたちを否定することで、自己肯定するしかないのです。

そんな中で、人は簡単に否定されて、爪弾きにされる社会への怒りへ私103も共感せずにはいられませんでした。共同体の一部としてマジョリティーで暮らすことが正解とされている社会から異端の存在へ、自ら抜け出したことへの共感と言えるかもしれません。

(2)誰へみて欲しい映画なのか 子供へも大人へも共通するテーマ

自分の子供時代、スティーブン・スピルバーグ監督を筆頭に、子供の気持ちをよくわかっている大人たちが映画作りをしてくれていました。そこで生まれた数々の名作をリアルタイムで見ながら育ってきた中、映画「えんとつ町のプペル」を見ながら、きっと子供達はワクワクしてこの映画を見るのだろうなということが想像できました。子供がみる映画は、例えば、「アダムスファミリー」のようにあらすじも大事ですが、それ以上に夢を抱ける大切なワクワク感を与えてくれるかどうかがもっと重要なのではないでしょうか。あらすじからは外れてるとも言える、言ってしまえば絶対的にストーリーに必要とは言えないハロウィーンのダンスシーンや、トロッコが疾走するアドベンチャーなシーンなど、きっと子供たちはそういう場面でスクリーンに釘付けになりハラハラドキドキすると思います。

常にその表現に意味が大きくある必要は無いと思います。非現実的なものを信じる力を養わせてあげることが大切なのではないでしょうか。

同時に、同じ子供目線でこの映画を見ることが出来ない大人達への問いかけでもあるのがこの映画でした。スティーブン・キング原作の映画「スタンドバイミー」も、大人になってみてみると、子供時代に見た時の冒険的なワクワク要素よりも、ノスタルジーや残酷さなどに目を向けるかもしれません。しかしながら、「スタンドバイミー」も子供目線でも大人目線でも成り立つ映画なのです。そして、この「えんとつ町のプペル」はその要素を十分もっている映画でした。

大人になった自分が、ブルーノに共感するのか、アントニオに共感するのか。これは、心に突き刺さる問いではないでしょうか?

(3)体制側の思想の貧弱さから現代を見通す

もう一点、興味深い設定が体制側の描き方でした。

えんとつ町を創りあげた本人は決して大義があったり、傲慢であるリーダーとしては描かれていません。むしろ、そこにはブルーノのような深い思想があるようには見えないのです。もともと、良い町をつくるという野望はあったのかもしれませんが、今となっては見て欲しくない部分を隠すことを優先し、異端な者を排除する集合体の一部となっています。そこに強い信念が宿っているわけではなく、希望を持つこと、持たれることを恐れた統治を行なっているところが、現代の日本を現しているのだと思いました。

どこかの国のリーダーたちは、独裁的な方法を取る中、日本は至って平和的に世の中が回っています。国のトップに限らず、リーダー達は自分たちの言葉で思いを語ることはなく、多くのことに対してどちらに転んでもそこまでの思い入れもなさそうなニュースが次から次へと産まれます。意思を持つ人間は、飛び出た杭を叩くように、異端な者として片付ける。そこへの違和感を持たずに生きることで世渡り術だけ上手い人間がたくさんいる。そして、リーダーも、星が見えたら見えたで、それならしょうがないとある意味諦めて受け入れる。そして日常は戻る。

この、設定も絶妙でした。初めは、そんな体勢側の描き方が敵がしっかりと描けてないのではないかと思いましたが、よく考えれば、それこそが今ある日本の現状なのではないかと思い直しました。体制側の顔や声はあまりに影が薄く、異端審問会という組織は兵士も仮面をつけて顔が見えず、ただそこにあるのは集合体の中の異端な者を排除していくシステムの中に組み込まれた人たちが平和的に暮らしている町。そしてそのシステムを作っている体制も、ただ違う者を恐れ排除する事だけを行い深い考えが無いのです。

「えんとつ町のプペル」は世界に通用するか

残念なのが、映画について英語でサーチしてもあまり情報が出てこないですし、ホームページも日本語のみの様です。ただ絵本は英語訳もついてますし、無料で西野さんのホームページで英語訳の絵本も公開されてます。西野さん自身も海外の子供に絵本を配ったり個展も積極的に行ってる様です。

大人の日本人には特に心が痛いテーマだと思いますが、個人的に日本と少し似ている学歴社会だったりのプレッシャーがあるアジア圏の一部の国々でも十分受け入れられるテーマと信じています。

また、世界的にこの映画がどの様に捉えられていくのかぜひ見てみたいと思います。夢を見ること、挑戦し続けることを肯定するテーマが世界でどこまで受け入れられるのか。

大人の視点とは別に、子供達の視点としてはこの映画は世界中の子供達に見て欲しいですね。夢を追うことを応援する世界であるべきだと思いますし、それを子供達に伝えるのが大人の役目ではないでしょうか。

私103も日本に戻って、日本らしい働き方なども体験しつつ、若い世代への活力をあまり感じないことにとても憤りを感じていました。自分が大学生だった頃の若者と変わらない、無難な生き方を良しとする人たちに出会う度に悲しく思っていました。

ただ、今回、このような形で夢を追うことを、挑戦することを肯定している西野さんや、中田敦彦さん、そしてその行動に賛同する人たちが多くいることを知っただけでも日本も捨てたものじゃないと嬉しく思います。私たちのブログのタイトルのGetbusylivingは、スティーブンキング原作の「ショーシャンクの空に」からきています。希望を持ち続けることが大切だということで、まさしく「えんとつ町のプペル」は根本で同じメッセージを訴える良作と言えます。できれば、大きなスクリーンで観ていただいて、あのドキドキワクワク感を子供のように味わってみることをお勧めします。

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