永住権を取得する方法やメリットなどは語られ尽くされているところですが、永住権取得後のデメリットや失効のリスクなどについての体験談です。
オーストラリア永住権取得 不確実な条件やポイント制
日に日に取得のハードルは高くなっているのは、事実だと思います。
ただ、オーストラリアに関していえば、ビザや永住権発給を非常に細かくコントロールしています。なので、永住権をねらって会計士になろうと大学に入学しても、卒業後の数年後に会計士が永住権取得をしやすい職業かはわかりません。その時その時で、フレキシブルに枠をかえていきます。
よって、永住権を目標として大学に入学しても、卒業から永住権につながるかの何の保障もない。また、企業が簡単に就労ビザや永住権をサポートしてくれるか、と言うのも難しい。なぜなら、サポートできる職種が限られているし、さらにビザ代金も一人何十万円とかかるし(下手したら100万円越え)、企業の健全性も審査されたりする。
年齢であったり、学歴であったり、職歴であったり、そういった色々な面でポイントを上げて永住権につなげていくという地道な努力が報われるかは、そのときのオーストラリアやその国の現状に色濃くつながっていく。
ここでは、家族としての永住権は置いておきます。これは、自身がコントロールし得ないし、「結婚相手を見つけるのが一番簡単だよ」なんて、浅はかなコメントは本気で永住権を考えている人には何の手助けにもなりませんので。
元も子もない話になってしまうかもしれませんが、自身の経験と周囲の人たちを見て来た中で、永住権が確実に取得できる魔法の方法は無いと言って良いかと思います。反対に、永住権を匂わすビザエージェントや企業は、どこまで信じて良いのかはご自身がしっかり判断すべきです。
103もオーストラリアの健全な地元企業でマネジャーをし、多くの方を採用してビザについて人事部やビザエージェントと一緒に作業をしておりましたが、人を採用する際に「ビジネスビザや永住権の取得」の可能性があることは決して釣りの言葉として伝える事はしませんでした。
なぜなら、多くの方が永住権を狙っていると知っていたからこそ、期待に添えない場合に落胆して欲しくなかったですし、それだけに全力を尽くすことをして欲しくないと思っていたからです。
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永住権 メリット
では、具体的に永住権を得ることで何を得ることができているのでしょうか?オーストラリアの例を見て見ます。今回は、市民権を得るという話はおいておきますね。
(1) オーストラリア市民とほぼ同等な就業環境
通常、オーストラリアで働くためにはビザ(許可証)が必要です。就労が認められていて一番簡単に取得できるのがワーキングホリデービザ。ほかにも週の時間制限のある学生ビザや企業がスポンサーしてくれるビジネスビザなど、オーストラリアで合法で就労できるビザはありますが、全て期限付きです。
その期限がなく、市民と同等に働くことができるのが永住権。
国が管理している国立公園でレンジャーとして働くことができないなど、ある程度、市民でないとつけない職業はありますが、それでも一般的な職種はすべてカバーできるでしょう。
さらにいうと、隣国NZで働くことができるのです。逆の場合は、不可なのですが、オーストラリア永住権保持者はNZで就労可能だというなんとも不思議なルールもあります。
就労環境が非常に優れているオーストラリアで何の足かせもなく働くことができる権利、というのがやはり永住権の一番の強みです。
(2) 健康保険 メディケア
次に重要な要素が、市民と同じ健康保険メディケアに加入可能になります。
公立病院の受診などが無料となります。毎年、税金で2%ほど収入に応じて徴収されますが、基本的に歯科以外は病院がタダです。
メディケアがない場合は、学生やワーキングホリデービザの保持者は海外旅行保険などに加入しておかないと思わぬところでオーストラリアは高額医療請求になりかねません。例えば、辺鄙な場所で病院にかかる必要が出た場合、近くの医療機関までフライングドクターヘリなどで飛ばされる可能性があります。辺鄙な場所(そこに観光地があったりするのです、オーストラリアは!)の診療所から500Km離れた病院へレントゲンをとるために移動するなんてことも簡単に起こりえます。そうなると、ヘリコプター代が何十万円となります。メディケア保持者は無料です。
ただ、現実的には、多くのオーストラリア人がプライベート保険に同時に加入している場合も多いのは事実ではあります。公的医療機関では、対応が限られている場合もあるからです。
(3) 不動産購入ができる
外国人がもちろん不動産を購入することも可能ですが、昨今ではその規制もかなり厳しくなってきています。市民や永住権保持者よりたくさんの税金を取られてしまうことはご他聞にもれずです。
オーストラリアは常に『不動産バブル』だといわれ続けています。もちろん、大都市の利便性の良い場所には建築過多だと明らかに思われる高層マンションが建てられすぎているのは確かです。しかしながら、人口をコントロールしているオーストラリアなので、移民や留学生など、住む場所を求めている人間が上手いことマーケットには存在しています。
不動産という資産を持つことは、一般的なオーストラリア人には当たり前の資産運用になっています。
オーストラリア永住権 失効のリスク
こう聞くだけで、永住権は持っていて全く損はない素晴らしいものだと思われると思います。多くの人が、やはり自分の国で生きていく以外の選択肢を得ることで、世界を広げることができる可能性があることは心のゆとりにつながるはずです。
ただ、その永住権を保持することがたやすくない現実も知っておいていただきたい。
永住権自体は永遠のものだといえるかもしれませんが、実は、オーストラリアに行き来するためにはリターンビザと呼ばれるビザが存在しています。5年毎に更新となり、オーストラリアに生活している間は全く問題なく更新可能です。ただし、更新費がA$400以上します(2020年現在)
更新のルールをご覧ください。
If you have lived in Australia for 2 years (730 days) in the last 5 years as a permanent resident, former citizen or former permanent resident, then you meet what is known as the residence requirement and might be given a 5 year travel validity on your visa.
If you have not lived in Australia for 2 years in the last 5 years as a permanent resident or former citizen or former permanent resident, then you might be given a maximum of 12 months travel validity on your visa if you can demonstrate substantial ties that benefit Australia. Check the substantial ties documents that you need to provide under Step by step, Gather your documents.
https://immi.homeaffairs.gov.au/visas/permanent-resident/overseas-travel
(1)過去5年以内の2年以上、オーストラリアに住んでいれば更新OK
(2)過去5年以内の2年以上、オーストラリアに住んでいなかった場合は『オーストラリアとの繋がりを証明』すれば12ヶ月のビザを与えます
時間が進むにつれ、この(2)が壁と成り立ちはだかることが人生の中で多々出てきます。
例えば、
- オーストラリアの景気が悪くなり、日本でのほうが働く口がみつかりそうなので、日本で働きに戻るか
- やっぱり日本の食事が好きだし、サービスもよい日本で暮らしたいな
- 日本の家族が年老いたので、家族のそばで暮らしたい
などなど、海外に長く暮らせば暮らすほど、日本が恋しくなることがあるものです。生まれ育った文化の中で暮らしたくなる気持ちは年月と共に高まることが多いようです。
多くの海外で出会った永住権保持者は、このような悩みに直面することになっていました。せっかく勝ち得た永住権をキープしたい思いもある反面、日本に帰りたくなる人も多々います。
結局は、永住権を取得するイコール日本ではなくオーストラリアで生きていく覚悟を本当に持っているのか?という選択が、実は永住権を得るという行為の背景にあるのです。
国によっては、そういった規制がない国もあると思いますので、それはラッキーですね。例えば、NZはオーストラリアのような厳しいルールは現時点でないようです。
オーストラリアとの繋がりの証明
ただ、上記のような厳しいルールの中にも常に融通を利かせてくれるスペースはくれています。オーストラリアとの繋がりを示すことができる場合は、2年滞在暦がなくても再度入国をOKにしてくれます。
では、何をもってオーストラリアとの繋がりと証明できるかなのですが、ここは明確なルールはないでしょう。過去に前例として私が見たのは、
- 日本で働いていた際に、オーストラリアを取り扱うメディア会社に所属していた
- 日本の学校で英語教師をしている際にオーストラリアを扱う授業を行っていた
- オーストラリア国内の企業からフルタイムの仕事の内定をもらっている
と言う理由の人が、実際、許可されていました。ただ、これは審査官の受け取り方次第ですし、本人の見せ方次第ではあります。企業の内定提示は基本的にOKになるはずですが、ただ、一般企業が「入国の許可をまだ得てない人間」に対して、フルタイム(正社員)の内定を出してくれるのかは難しい面もあるかもしれません。
ほかには、やはりオーストラリア国内に不動産を持っているというのは大きいでしょう。
ただ、オーストラリアという国はイージーゴーイングで審査官によって答えが変わってくるような国である反面、ルールもよく変えます。なので、この5年中2年などのルールもいつかわってもおかしくないかもしれません。事実、更新料などは毎年勢いよくあげてきます。ワーキングホリデービザの料金などもそうですよね。ビザ代金が異常に高額になってきているのです。
永住権のメリット・デメリットを知っておく事が大切
永住権がゴールだと思って、それに向かって突っ走った結果、さらにそこから人生への縛りが出てくることも知った上でチャレンジする必要があるというのが今回のお話の要点です。
とはいえ、永住権を持つことは、選択肢を広げることになるのは確かです。自分たちも、好きなときにオーストラリアに戻れる環境を作っているからこそ、日本で暮らしてみたいなという願望も同時に実践できているのだし、そこに何らかの動き回れるスペースが生まれています。
今、永住権に向けて必死で頑張っている人、応援しています!そのプロセスの中で、永住権を得たあとの人生構築についても是非この機会に今一度考えていただけるきっかけになってもらえれば光栄です。
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